本稿は三菱UFJイノベーション・パートナーズ（MUIP）が昨年に開催した大型イベント「MUIP Innovation Day 2023」に集まった注目のフィンテック・スタートアップをご紹介するもの。三菱UFJフィナンシャル・グループ（MUFG）の事業会社各社とのオープンイノベーションを念頭に、どのようなシナジーを生み出すのか。セッションの内容を元に各社の取り組みをご紹介する。
BNPLがさらに進化させた「ChargeAfter」
高額商品の購入に際しては、先進国を中心にクレジットカードを使った分割払いが普及してきた。一方、クレジットカードは一定のクレジットヒストリー（信用履歴）を持つ人にしか発行されないため、クレジットカードは持っていないが分割購入したい人々には、BNPL（Buy Now, Pay Later）というサービスがここ数年で普及した。BNPLはeコマースと相性が良く、ショッピングカートの決済画面にこの選択肢を提示するだけで、売上が数倍以上に伸びる事例は世界各国で確認されている。
ChargeAfterはこのBNPLをもう一つ発展させたPOSファイナンスというサービスを提供している。POSファイナンスはまさにPOS（販売時点情報管理）からきているが、商品購入時の支払手段の提示がユニークだ。ChargeAfterは決済金額や購入者の条件などを複数の銀行や金融サービスプロバイダなどに提供し、購入者は銀行や金融サービスプロバイダが提示してきた分割支払条件（例えば期間や金利など）に基づき、最も有利な金融サービスを選んで分割払いできる。
我々が現在サービスを提供しているのはアメリカ、カナダ、オーストラリアなど。Wells FargoやCitibankといった40ほどの銀行や、HomeDepot、LG、Samsungといった小売大手と仕事をしています。そうやって、消費者が小売大手から商品を購入しようとした時に、どの銀行がベストなオファーを出しているかを消費者に提示するのです。（ChargeAfter CEOのMeidad Sharon氏）
モデレータを務めたMUIP Deputy Chief Investment OfficerのMayank Shiromaniがイノベーションを生み出すために何が必要か尋ねたところ、Sharon氏は、イノベーションを推進することはもとより、社内からだけでなく顧客からもたらされる声に耳を傾けることが最も重要だと答え、銀行の存在価値は尊重しながらも、技術力と機動力こそがスタートアップの強みであると語った。
ChargeAfterについて
ChargeAfterはBNPLを更に発展させたPOS金融サービスを提供するスタートアップです。POS金融は、販売時点情報管理（POS）に由来しており、商品購入時の支払手段の提示が非常にユニークです。ChargeAfterが提供する金融サービスプロバーダーは購入者の条件や決済金額などを複数の銀行や金融サービス・プロバイダーに提供することが可能で、購入者は提示された複数の分割支払条件（例：期間や金利など）から最も有利なものを選んで分割払いをすることができます。他の既存のマーケット・ソリューションでは、通常1つのBNPLオプションしか提供しないのが一般的であるのに対し、ChargeAfterのクライアントは購入者に対し、期間や金利など条件が異なる複数のBNPLオプションの提示が可能となります。これらのオプションは、購入者のプロフィールや購入商品価格と、クライアントの銀行や金融サービス・プロバイダーのパートナーからの条件や要件を照合した後、ChargeAfterによってリアルタイムで生成され、購入者はその提示された複数の分割支払条件から最も有利なものを選んで分割払いができる仕組みです。銀行や金融機関の幅広いネットワークから複数のオプションを提供するというChargeAfterのアプローチは、BNPL取引の全体的な承認率を高め、顧客の満足、ChargeAfterの加盟店クライアントの取引増加、ChargeAfterの収益増加を可能とします。
イスラエルのテルアビブで2016年に設立されChargeAfterは、現在では、同社のサービスの主戦場であるアメリカのニューヨークに本社を移しました。MUIPは決済手段の多様化におけるBNPLニーズと、消費者と複数レンダーとのマッチングを実現できる点を評価し、2020年1月に出資しました。ChargeAfterは、MUFGをはじめ金融機関から資金調達し、ホワイトラベルのPOS金融商品の開発をするなど、加盟店ネットワークの開拓に注力しています。
