消費者に保険が普及していない東南アジア、デジタルで便利と安心を届けるQoalaの挑戦

2024.06.27

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Qoala社 Co-FounderのTommy Martin氏とHarshet Lunai氏

東南アジアの成長企業の中でも、Qoalaは際立った存在感を放っている。同社はテクノロジーを活用し、航空機遅延補償やスマートフォン画面割れ補償、マイクロ医療保険といった小口の保険商品を提供することで、この地域における保険の認知度と普及率の向上に尽力するスタートアップだ。

インドネシアを拠点に置くQoalaは、CEOのHarshet Lunani氏と副CEOのTommy Martin氏によって2018年に設立された。2人は、インドネシアをはじめ東南アジアの国々で、日常生活に保険というものが十分に行き渡っていないことに危機感を抱いたという。

当時、インドネシアの一般保険と生命保険の普及率はわずか2%にも満たず、保険リテラシーの低さや伝統的な商品のコストの高さが主な要因でした。(Lunani氏)

QoalaはAIやデジタル化を駆使し、保険の販売から保険金請求に対する処理に至るまでのプロセス全体を最適化。日常的に頻繁に使われるユースケースに対応した低価格の保険商品を提供することで、広く一般消費者の生活に保険を浸透させようとしている。

現在、Qoalaは60社を超えるインドネシア国内外の保険会社と提携し、東南アジア各国で事業を展開する。特に、広範な販売エージェントのネットワークの活用が同社の強みだ。現在、Qoalaは60社を超えるインドネシア国内外の保険会社と提携し、東南アジア各国で事業を展開する。特に、広範な販売エージェントのネットワークの活用が同社の強みだ。

インドネシアとタイでは約6万人のエージェントに対し、当社のデジタルプラットフォームから直接保険販売とサポートを提供できます。(Martin氏)

デジタル化、保険証券の即時発行、シームレスな保険金申請

従来、保険の加入に際してはエージェントを通じて申し込み、保険会社で審査を経て保険証券が発行されるというプロセスが必要だった。しかしQoalaでは、エージェントがアプリ上で申し込みを行えば、リアルタイムで保険証券が発行されるようになる。さらにエージェントへの手数料支払も即時に行われるため、彼らの資金繰りの負担を大幅に軽減することも可能だ。

保険証券の即時発行と即時支払は当社の大きなアドバンテージです。エンドの最終消費者へ優れたサービス提供が可能になるので、保険料収入の内90%の決済がQoalaのシステムを通じて行われ、その結果として保険証券の発行やエージェントへの支払いをリアルタイムで行うことができ、また詐欺なども未然に防ぐことができます。(Lunani氏)

また、Qoalaが構築した業務ダッシュボードが保険会社、エージェント、修理業者などの利便性を大きく改善した。見積、保険金請求、保険証券の発行に至るまでのプロセスを一元的に扱え、それぞれのステークホルダーに応じたSLA(サービス品質水準)を設定して業務を最適化したからだ。

Qoalaはデジタル化によるサービス向上にも注力しており、旅行時の保険金請求では大幅な利便性向上を実現している。従来、保険金請求には膨大な書類の提出が必要だったが、Qoalaの場合は搭乗券の写真と口座情報を送るだけで済んでしまう。

また、スマートフォンの画面割れ補償サービスの場合も、スマートフォンの破損箇所の写真をアプリで送れば、AIが損傷の程度を自動認識する。その上で修理業者に内容を伝え、修理費の見積額を算出。保険対象額に応じた請求金手続きが完了するという、シームレスなプロセスを実現している、というわけだ。

書類の準備や提出に手間を取られることなく、どこからでも保険金を請求できます。お客様の利便性を最大限に高めたサービスを心がけています。(Martin氏)

事業拡大とさらなる革新に向けて

Qoalaは2024年3月、シリーズC資金調達ラウンドで約4,700万米ドルを調達したことを明らかにした。主要投資家には、三菱UFJイノベーション・パートナーズ(MUIP)のほか、PayPal Ventures、MassMutual Venturesなどの有名VCが名を連ね、期待の高さを窺い知ることができる。

Qoalaは調達した資金を使って、現在インドネシア、タイ、ベトナムで展開している事業を、東南アジア全域に拡大することを計画している。また、新製品の開発や新規販売チャネルの構築に加え、AIの活用によるさらなる業務の効率化も予定している。

今回の資金調達は、我々がこれまで取り組んできた、保険の民主化という戦略とミッションへの市場からの信頼を示すものです。(Lunani氏)

MUIPは、Qoalaが三菱UFJ銀行の連結子会社であるダナモン銀行と連携して、従業員や顧客へ保険を普及させることを期待している。MUIP代表取締役社長の鈴木伸武氏は次のように述べた。

インドネシアの保険普及率は依然として低水準です。保険へのアクセスを強化するQoalaのオムニチャネル・アプローチは高く評価できます。(鈴木氏)

Qoalaがダナモン銀行と協業することで、ダナモン銀行のサービスを最大限活用し、ハイエンド保険商品への一般消費者のアクセス向上、バンカシュアランス商品(銀行で扱う保険商品)の提供などの連携を考えている。

Qoalaによるテクノロジーとイノベーションへの果敢な挑戦は、東南アジアにおける保険の民主化を着実に進めることになるだろう。

消費者に保険が普及していない東南アジア、デジタルで便利と安心を届けるQoalaの挑戦