技術×法務で契約業務のDX推進、MNTSQ(モンテスキュー)が挑む企業の意思決定プロセス変革

2024.07.30

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MNTSQ創業者兼CEO 板谷隆平氏

三菱UFJイノベーション・パートナーズ(MUIP)は2024年6月、法務業務のデジタル化を推進するMNTSQ(モンテスキュー)への出資を発表した。MNTSQは、契約業務に関する社内ナレッジを一元管理し、契約プロセスを効率化するSaaS「MNTSQ CLM」を主力製品として提供している。

MNTSQの創業者でCEOの板谷隆平氏に、MNTSQの創業やMNTSQ CLMを開発した背景、MUIPから出資を受けた理由などについて話を聞くことができた。

「MNTSQ CLM」とは

板谷氏は、かつての弁護士時代の経験から、契約交渉に不慣れな当事者が不利な契約を結んでしまう社会課題に気づいたという。

ある案件で、クライアントの交渉の相手方が『あなたを信じます』と私に伝え、その契約内容を詳しく確認せずに合意されました。結果的に、契約業務に不慣れな相手方は自らが不利な契約を知らずして締結することとなってしまい、契約業務の公正な在り方について思い悩んだ経験があります。クライアントに有利な契約が締結されることは、弁護士として素晴らしい仕事をしたと言えます。一方で、契約交渉に無知・不慣れであるが故に、そうとは知らずにアンフェアな契約を結ばされてしまう社会課題に気づくきっかけとなりました。この経験が、誰もがフェアに契約を結べる社会の実現を目指すMNTSQの設立につながりました。(板谷氏)

凄まじいAI技術の進歩が、契約業務、法務業務に応用できる水準にまで進歩しているという世の中の動きを感じていた中、今であればテクノロジーを活用することでこの社会課題を解決できるのではという考えから起業を決意した板谷氏。誰もがフェアに契約を結べる社会の実現に向けて、その一歩を踏み出した。

「MNTSQ CLM」の最大の特徴は、高度な機械学習(自然言語処理)技術を用いていることと、板谷氏が出身の、四大法律事務所の一つである長島・大野・常松法律事務所のノウハウを学習に活用していることだ。この独自の組み合わせにより、各業界のリーディングカンパニーに幅広く導入されている。

MNTSQのソリューションは、契約締結前の契約書の作成・審査案件管理から締結後の更新・管理まで、契約・法務業務全般を一気通貫でサポートし、業務プロセスを変革する。これにより、企業の法務部門が直面する課題、例えば過去の契約書データの分散管理や、経験の浅い職員による複雑な契約書の確認といった問題に対して、効果的な解決策を提供している。

2024年4月からは新機能「MNTSQ AI契約レビュー」の提供を開始した。

MNTSQ AI契約レビューは、お客様ごとの過去の契約書データをもとに、その会社独自のルールやノウハウを活かしたオーダーメイドの契約レビューを可能にするものです。高度にカスタマイズされたソリューションを提供できるようになりました。(板谷氏)

この機能を加えることで、MNTSQ CLMは各企業内のナレッジ活用の在り方を強化し、従来の契約レビューツールに対してさらに独自のポジションを築く存在となった。MNTSQが目指す「法務に関するすべての業務が完結する」プラットフォームの実現に向けた重要なステップと位置付けられている。

Image credit: MNTSQ

MUIPからの出資と今後の展望

MUIPからの出資を受けた理由について、板谷氏は次のように説明してくれた。

MUFGグループの三菱UFJ銀行様は『MNTSQ CLM』をご利用頂いているお客様であり、当社のプロダクトについてのご理解や、多くの金融機関においてDXが喫緊の課題であるという課題感をお持ちでした。また、投資検討プロセスでは、当社の事業理解に根差した本質的なご意見をいただけたことや、スタートアップに対する投資とその後のご支援における各領域のプロフェッショナルが揃っているチームだと感じ、パートナーとしてご一緒させていただきたいと思いました。

今後の展望について、板谷氏は「法務に関するすべての業務が完結する」プラットフォームの構築を目指すと語っている。単に契約締結といった一部の業務のみを効率化・代替するのではなく、契約業務のプロセス全体がMNTSQ CLM上で完結する、包括的なプラットフォームの実現を視野に入れている。

MUIPとの協業については、MUFG各社(三菱UFJフィナンシャル・グループ)に対する提供価値の向上やプロダクトの改善、さらにMUFGの顧客企業向けの契約・法務業務のDX推進に向けて積極的な連携を進める予定だ。こうした連携により、契約管理の効率化と高度化が大きく前進することが期待される。

Image credit: MNTSQ

MNTSQの技術と法務の専門知識を融合させた革新的なソリューションは、単に契約管理の効率化にとどまらず、企業の意思決定プロセスそのものを変革する可能性を秘めている。契約書データの構造的な分析により得られるインサイトは、新たなビジネス機会の創出や、リスク管理の高度化にもつながる可能性がある。MUIPとの協業を通じて、こうした可能性をさらに追求していくことが期待される。

MUIPは、MNTSQとの協業により、契約書データを用いた業務高度化・効率化、さらにはMNTSQのソリューションとMUFGのアセットを組み合わせた新規プロダクト・事業開発の可能性にも期待を寄せている。この協業を通じて、契約管理にかかる業務での変革が実現される可能性も見込んでいる。

MNTSQの今後の成長戦略として、AI契約レビュー機能のさらなる改善と普及に注力していく。MNTSQ CLMの基本理念である一気通貫の契約・法務業務変革がより完成度の高いものとなるよう努めるとともに、業界を問わず多くの企業に向けて、個社内のデータをナレッジとして活かせる契約管理ソリューションを提供していく計画だ。

技術×法務で契約業務のDX推進、MNTSQ(モンテスキュー)が挑む企業の意思決定プロセス変革